深い孤独の中で生まれた作品たち。2020.06個展への新たな想い

2020年6月1日…横浜元町はしっとりとした雨に煙っていた。

長い自粛期間、僕は深い孤独と向き合いながら、ただひたすら、黙々と創作を続けた。

そして第9回個展『小さな星の片隅…葉っぱの裏の住人たち』が初日を迎えた。

不思議な事に、今年の始めに何となく浮かんだ個展タイトルは、今となっては現在の人間が置かれた状況を予言するようなものになっていた…。

(以下、ギャラリーに掲示した挨拶文となります)

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僕が関わる表現の世界。

そこでは型にハマらず枠組みも取り払って、大いに自由でありたいと考える。

自分の手や道具を使って生み出すアートは、今や一つのジャンルに拘る事がなくなった。

今回の個展では、僕の世界が初めて平面の絵画を飛び出した。

地球上のあちこちで、長い期間外出が制限された2020年前半。

そんな時でも空には太陽がさんさんと輝き、春の訪れと共に花々は次々と咲き誇る。

続く新緑の季節には、若葉が眩しい程の生命力を見せつける。

鳥たちは大空に澄んださえずりを響かせ、小さな虫たちも活動を始めた。

そこは自由でおおらかで、人間以外のものたちにとっては、いつもと変わらぬ時間が流れている。

そんな中で人間だけが見えない脅威に怯えながら、まるで葉っぱの陰で息を潜めるようにして、ようやく命を繋いでいるんだ。

もしかしたら自然界の中では、人間が最も弱い生き物なのかもしれないと、僕は考えながら過ごしていた。

今年の始めに個展のタイトルを決めた時、単純に葉陰に潜む生き物たちを創ろうと思っていた。

でも今回の事で、葉陰でコソコソ生きているのは人間だったという事に気付いてしまった。

擬人化したシュールな作品達は、怯えた人間達をなんとか元気づけようと、空想の世界から僕が連れて来た『愉快で優しい、愛すべき仲間たち』である。

そして、初めて取り組んだ陶芸作品。

ここには僕の中にある、別の一面を見つけて貰えるかもしれない。

2020年6月吉日

早川 希