伝えたいのは「ごめんね」じゃないよ。心からの「ありがとう」…

来月の個展のタイトル

『My dear…親愛なる君へ』

僕がこの言葉を捧げる対象は、広い意味でいくつも存在する。

でも、最もその中心に置きたい具体的な対象があるんだ。

 

2年前の春、2018年の5月のこと。

僕は自分の人生を 自分の心に正直に、本来の僕という人間としてに生きることを決めた。

その為にたくさんの思い出や大切ないろいろと決別して故郷に戻って来た。

 

こうやって言葉にしちゃうと本当に簡単であっけないね。

でも実際は、人生最大のギャンブル…というか、壊れそうなイカダで方位磁石も持たないまま、大海に漕ぎだしたような気分だったよ。

しかも、誰かに何か直接言われたわけではないけど…

そんな僕の行為によって悲しませたものたちが存在している事は分かっていたし、今でもそれを忘れてはいけないって思ってる。

 

その中に、僕の大切な小さな相棒もいたんだ。

それは、Facebookを見てくれている人なら知ってるかもしれないけど、ずっと一緒にいた「黒猫くん」

随分と長いこと一緒にいたから、人間で言ったらもう既にかなり高齢の彼。

他の猫よりも極端に神経質だったから、引っ越しで環境が変わってしまったら大きなストレスを抱えるだろうことは分かってた。

だからそんなことで寿命を縮めるよりも、住み慣れた環境で可愛がって世話をしてくれる人達がいるシェアハウスに残ってもらう事にしたんだ。

 

僕としては苦渋の決断だった。

 

だけど、僕がいなくなったあとも特に彼に変化はなくて、相変わらずハウスのアイドルだった。

良く食べて、良く寝て…

誰かの部屋に遊びに行ったり、お気に入りの人に抱かれてくつろいだり…。

それはいつもと同じ光景で、ただそこに僕がいない…それだけが彼にとっての変化だったんだ。

 

それでもやっぱり生あるものには必ず寿命というものがあって、それは彼も例外ではなかったんだよね。

僕が会いに行く予定だった日の3日前。

今年2月のある早朝、その時は本当に突然やってきた。

まるです~っと柔らかな風が吹き抜けていったように、彼の魂は天に昇っていってしまった。

 

偶然にも、彼の世話をいちばんやっていてくれてた人の仕事が休みの日。

もう一人は途中で仕事に行ったけど、もう既にシェアハウスを出て他県に住んでる人までもが駆けつけて、最後はみんなで見送る事が出来た。

 

前の晩、いつもの寝床ではなくて、僕がたまにのんびりする時に座っていたロッキングチェアーに乗って眠りにつこうとする姿を見たのが、生きている彼の最後の姿だったって聞いた…。

僕と黒猫くんの関係はとってもクールで、家で仕事する僕とは一緒に過ごす時間は長かったけど、ベタベタする事も無く、ただ同じ空間で時々会話のようなものをしながら過ごしていることが殆どだった。

常に何かしらの作業してる事が多いから、本当に時々テレビを見る時とかにそのロッキングチェアーに座ってると、膝の上に乗っかってきて暫く甘えるくらいだったなぁ。

 

珍しく違う場所で寝ようとしてたから、ハウスの住人の一人がちょっと気になって

「今日はそこで寝るの?」って話しかけたらしい。

彼の最後の姿を見たその人は、その日の夢に黒猫君が出て来たって言ってた…。

そして朝、気付いたらそのままそこで静かに息をひきとっていて…。

 

僕は夢…見なかった。

でも最後になぜ、僕との思い出の場所で寝ようと思ったのか。

家に戻って来て独りでそれを考えてたら、胸が締め付けられるように感じて、その場に立っていられなくなって思わずしゃがみ込んだ。

その時初めて、それまで全く出て来なかった涙が、一気に溢れ出してきた。

僕は自分の人生を生きる為に、自分の夢を掴む為に、彼の最後の時間を一緒に過ごしてあげることが出来なかったんだ。

みんなに可愛がってもらってたけど、最後の瞬間はその誰の所に行くこともなく、僕との思い出の場所で何を思ってその時を迎えたんだろう…。

 

親愛なる君へ。

 

凄く凄く悩んだけど、僕は最終的に君との時間を他の人に託して、自分の夢を選んだ。

時々会いに行った時の君は、何事も無かったかのように相変わらずクールに接していてくれてたね。

そして、家に帰る時もクールに送り出してくれたよね。

 

でも本当は、もっともっと僕に伝えたい事もあったのかもしれない。

なぜ突然いなくなったのかも、問い正したかったのかもしれない。

 

だけど「ごめんね」って言ったら、僕の心は後戻りしてしまいそうだ。

そうなったら、何の為に君がクールを装ってくれたのかわからなくなっちゃうよね。

 

だから僕は心からの「ありがとう」を君に贈るよ。

そして約束する。

君の元を去った時に胸に抱いてた夢を ひとつひとつ叶えていくよ、絶対に。

 

長い間、僕の親友でいてくれて

本当に、本当にありがとう。

 

大好きだったよ。

 

   noZomi

僕の第10回目の個展。

大好きだった彼に捧げると共に、一変してしまったこの世の中で、新たな一歩を踏み出して行く僕を含めた多くの人々へのエールも込めて…。🍀

 

早川希(noZomi)第10回個展

『My dear…親愛なる君へ』

 2020.9/7(月) ~ 9/13(日)

 ギャラリー元町(横浜市)