『静かな午後』個展[ASSEMBLAGE]より

子どもの頃 真夏の青空の下

プールの水に潜って遊ぶのが好きだった

大きく息を吸った後 息を止めて鼻をつまんで エイッとばかりに深くしゃがむ

すると 突然聞こえてくる音が変わるんだ

 

一瞬で違う世界に飛び込んでしまったように

さっきまで聞こえていた みんなのはしゃぐ声や水しぶきの音が消え

 

ゴォーッという川の流れのような音が 深く遠いところから響いているような

 

そして プクプクッ…プクプクッ…と かすかに泡が弾けるような音…

 

その音を聞くのが好きだった

 

なぜだか その音に包まれている時間 僕の心には深い安心感のようなものが広がっていく

 

まるで宇宙空間に浮遊しているようでもあり

そうだ! 今思えば

生まれる前の母親のお腹の中で 羊水に包まれている時の音に似ていたのかも…

 

あの夏の日

プールでは賑やかな声が響き渡り あちらこちらで水が跳ねる音が鳴り続けていたはず

 

それでもひとたび水中に潜ると

そこには この世界に飛び出す前に安心して眠りについていたあの時のような不思議な水音に包まれて

ゆらゆらと空想の中に遊ぶ僕がいた

水の中は とてもとても静かな午後だった🍀

 

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『静かな午後』

2021.10個展【ASSEMBLAGE】より