「大人になったら」

僕が育った港町横浜。

まだ僕が小さな頃は、今よりももっともっと異国情緒に溢れた町だったんだ。

 

そう、あの頃はまだ本牧辺りには米軍住宅が建っていて、町を歩けばしょっちゅうアメリカの人とすれ違う。

今のような観光客じゃなくて、地元に暮らす人々だ。

 

彼らがよく利用するようなお店、特にバーなんかは外国映画に出て来るような洒落たデザインの外観で…。

もちろん、中に入ったことなんてない。

陽が落ちる頃にはきっと色鮮やかな灯りがともされる看板や、やけに小さな窓から漏れる薄暗い照明が素敵なんだろうなぁ。

 

テレビで見た映画のシーンと重ね合わせて、いろんな想像を膨らませてたな…。

そこには、何だか秘密めいた特別な大人の空間があった。

小さな僕は生意気にも、そういう場所に憧れや浪漫のようなものを確かに感じていたんだ。

 

そんな風景に触れながら育った僕は、大人になったら「異国情緒」の地ではなくて、本当の異国の地に行くんだって勝手に決めてた。

そして、そこでアクション映画の主人公のように大活躍する自分を本気で夢見てたりしてね(笑)

 

あの頃は今よりもきっとこの国が、もっと心豊かな時代だったのかもしれないね…。🍀

 

(2019年個展「solitaire…ひとり遊び」展示作品)

「大人になったら」

 

大人になったらね

いろんな国の素敵な場所に遊びに行くよ

 

鳥の羽のペンに青いインクをつけて

お手紙たくさん書くからね

 

そして 飛行機に乗っけて

いろんな国から届けるよ!

 

…noZomi

 

=地球に 人に 優しいアートを=

僕らを育んでくれるこの星とあらゆる命への敬意、

そして魂の居場所である肉体に感謝を込めて…

       早川 希